【手は言葉以上に愛を語る】10
第10話
世界で1番好きなのは?究極の選択
登場人物
1.主人公妻:黒井愛美(くろい まなみ)
2.主人公夫:黒井義輝(くろい よしき)
3.病院の先生と看護師
「愛美ー何食べたい?」
あれからというもの
掃除に、洗濯、料理まで
よしさんが手伝ってくれる
以外によしさんの料理も
悪くないなぁって思うけど。。。
なんだか申し訳ない気持ちになってしまう
「いいから、いいから休んでて。明日も病院つれてくからさ何時だっけ?」
「朝10時だけど仕事大丈夫?ごめんね迷惑かけて、ちょっとまだ具合悪いから寝るね」
実は体調が良くない
妊娠したから
具合が悪いのだとずっと思ってたんだけど、
嫌悪感がぬけないんです。
でも私はよしさんに言えずにいた。。。
次の日、病院にて
医者「お腹の中の赤ちゃん元気に育ってますね。もうちょっと大きくなってくれば、性別もわかるようになるから、頑張って栄養取ってくださいね!」
「はい、ありがとうございます」
医者「今日旦那さんも来てくれてるということで、少し呼吸法についてお話ししておきたいんだけど、近くにいらっしゃいますか?」
「少し待っていてください、今呼んできます」
医者「。。。」
「よしさん、よしさん、呼吸法についてお医者様がお話ししたいから診察室に来て欲しいみたい」
看護師「あっ奥様は別室でゆっくりなさっててください。」
「はい。ありがとうございます!」
トントン
「失礼します。愛美の夫の黒井義輝です。よろしくお願いします。」
医者「黒井さん。。。今日はですね。少しお話しておかなくてはいけないことがございまして。お呼びしました。」
「呼吸法のことですよね?少しネットで調べました。ヒッヒッフーってやつですよね???」
医者は義輝の会話をさえぎるように言った。
医者「実はそうではないのです。冷静に聞いてくださいね。」
義輝に緊張が走った。
医者「お子様はかなり元気に育っています。ですが、愛美さんの体力が著しく低下しており、非常に申し上げにくいのですが、このままだと、母子共に安全な出産が難しいと我々は見ています。」
義輝は突然の事で
何を言われているのか理解ができなかった。
「どういうことですか?もっとわかりやすく教えてください!」
苛立ちを隠せず自然と
大きな声で返してしまう義輝
医者「もし、お子様を産むことができた場合。奥様の命が危険な状態になることが予測されます。もし、奥様の体を第一に考えた場合はお子様を諦めるという形になってしまうかと思います。もちろん私たちは全力を尽くします。」
「このことを愛美には?」
医者「愛美さんのメンタルを考えて、旦那様に先にお話しさせていただいた次第です。申し訳ありません。」
「いや、先生は悪くないので謝らないでください。このことは、責任もって僕の口から伝えるんで。言わないでください。」
医者「わかりました。母子共に健康な状態での出産確率は数%ここにかけていくか、今回は無理をせず奥様を優先させるか、よく考えてご決断してください。」
「わかりました。。。失礼します」
「あっよしさんおかえりー先生なんて?」
「いやぁ、難しいんだなぁ呼吸法ってさー家に帰ったら一緒に練習しよう」
言えなかった。
数日間言えなかった。
なんて言ったらいいのかがわからなかった。
ある朝、辛そうな愛美を見て話しかけた
「なぁ愛美、体力落ちてないか?大丈夫か?」
「私は、この子を産みたいの。よしさんに似てくれたらいいなぁ。」
「本当に大丈夫か?」
「何どうしたの?今日のよしさん変だよ?」
もう隠せなかった。
医者に言われたことを愛美に伝えた。。。
しばらくの沈黙が続いたあと
重い口を開いたのは愛美だった
「前に、車の中で世界で1番好きな人の話をしてくれたでしょ?私はもちろんよしさんのことが好きよ。でも、きっと母親として今この子を諦めるわけにはいかないわ。私頑張る世界で1番好きな我が子の顔を見るまでは私頑張るから信じて側にいて」
涙が止まらなかった。。。
「私なら大丈夫よ、だってほらよしさんが俺に任せろ何とかするって言ってくれてたし、可能性があるなら、その可能性にかけてみたいな!たぶんよしさんなら諦めるなっていうでしょ?」
たしかに【夢は諦めなければ叶う】が
俺の口癖だが
今回はそんなことも言ってられない。
愛美の目は真剣だった
そこには女性としての愛美ではなく
母親としての愛美がそこにいた。
「わかった、先生には限界まで頑張る愛美の意志を伝える。だけどもしものときは愛美優先に俺は考える。それでいいか?」
「うん。よしさんにとっては私が世界で1番だもんね。私を助けて」
俺に何ができるのだろう?
「よし、、さん、、、」
バタッ。
「愛美?愛美ーーー!!!」
どうやら気持ちの整理を
待ってくれる時間はないようだ。
続く
【次回予告 】
第11話
強い愛美の意志と強い愛美への愛。
限りなく可能性の低い出産に立ち向かう。
果たして生きるとは産まれるとは何か
「命懸けの戦い」
お楽しみに